これも1973年のグルーヴ、Dave Liebmanの日本録音盤

1973年6月、マイルス・バンドのツアーで日本に来ていたサックスのDave Liebman、同じ時期に訪日していたStan GetzのバンドのリズムセクションDave Holland, Jack DeJohnette, Richie Beirachと。

First VIsit

1973.06.20&21.

f:id:modernmovement1930:20170825155811j:plain

(ただし所有しているLPは1980年の再発盤でジャケ違い)

 

A面はカルテットで2曲、B面はデュオやトリオで4曲。雰囲気ががらっと変わる。B1はピアノとのデュオでぐっとテンポを落とした"Round about Midnight"。そのあとはかなりフリー。すでにPost-1968 Milesの向こうへと突き抜けている。

 

この時期、Dave HollandJack DeJohnetteはどれだけ活躍していたのかと。

 

Dave Liebmanのマイルスとの録音は、1972.06&07のOn the Cornerから1974.03のDark Magusまで。

Joe Hendersonのファンク、1973年のグルーヴ

1960年代半ばすぎまで、Blue Note時代のJoe Hendersonはリーダー・アルバムが充実した出来だが、同時にセッションでも都合よく使われ、彼も器用に合わせすぎたように思う。Blue Noteを離れたあと、MilestoneやVerveでは当初いまひとつ方向性が定まらず、やっとこの作品でファンクに結実する。

Multiple

1973.01.

f:id:modernmovement1930:20170824105133j:plain

マイルス・バンドを辞めたあとのDave HollandJack DeJohnette。エレピ、ギター、パーカッションの音がPost-1968 Milesのファンク。

 

この1年前に録音のBlack Is the ColorBitches Brewそのもの。詰め込みすぎで無理をしている感じ。

1972.03.

f:id:modernmovement1930:20170824105847j:plain

ベースにDave HollandRon Carter、ドラムにJack DeJohnetteで、Bitches Brewそのまま。ギターのJohn McLaughlin、キーボードのJoe ZawinulChick Corea、パーカッションのDon Aliasなどの代わりがそれぞれ入っている。そしてWayne ShorterではなくJoe Henderson。でもこれを一度やったから、Multipleができたのだろう。

 

でもこのあとまた迷走するような。

 

Miles at Fillmoreの翌月に、西海岸でLee Morgan

Miles DavisChick CoreaKeith Jarrettを従えてFillmore Eastやthe Isle of Wightでライヴしていた1970年夏に、カリフォルニアでLee Morgan

CDには12曲も収録されているようだが、LPの4曲で十分

Live at the Lighthouse

1970.07.10-12.

f:id:modernmovement1930:20170823171314j:plain

マイルス関係者だと、Bitches Brew, Jack Johnson, On the Corner に参加したサックスのBennie Maupin。彼はHerbie HancockがBlue Noteを離れた後の一連の1970年代ファンク盤で活躍。

 

CDでライヴ12曲も聴くよりは、余力を残して最後のスタジオ録音に。

The Last Session

1971.09.17-18

f:id:modernmovement1930:20170823163620j:plain

 

この最後の2枚は、グルーヴがそれ以前と違う。

ベースはJymie Merritt。Lee MorganとはJazz Messengersつながりだが、50年代末のMoanin'から60年代初頭までの演奏イメージしかなかったため、1970年代に入ってのこの2枚の音に驚き。

マイルスはDave HollandからMichael Hendersonへと続けられたが、Lee Morganはこれで終わり、なんとも残念なことに。

50年代末から60年代初頭にかけてのBlue Note-Hard BopのLee Morganとは異なるLee Morgan。あっちも当然いいけれど、こっちはもっと注目されていいはず。

Chick Corea's Another Return to Forever

Stan Getzのリーダー作だが、ほとんどChick CoreaのReturn to Forever。

Captain Marvel

1972.03.

f:id:modernmovement1930:20170822224005j:plain

Stanley ClarkeとAirto Moreiraがおり(ドラムはTony Williams)、サックスをStan Getzの代わりにJoe FarrellにすればReturn to Forever。

Return to Forever録音の1ヶ月後、Light as a Feather録音の半年前。

 

サックスのスタイルと音の違いで、全体の印象が異なる。

 

同じメンバーでライブ、Captain Marvel の4ヶ月後。

At Montreux

1972.07.23.

f:id:modernmovement1930:20170822225231j:plain

 

Chisk CoreaがStan Getzと最初に録音したのは

Sweet Rain

1967.03.

f:id:modernmovement1930:20170822225115j:plain

ベースはRon Carter

裏(あるいは表?)In a Silent Way

Post-1968 Milesにとっては、Chick CoreaDave HollandJack DeJohnetteにくわえて、Joe Zawinulの参加が決定的に重要だった。

In a Silent Wayは自分のアルバム、と主張しているかのような。

Zawinul

1970.08&10?

f:id:modernmovement1930:20170822000025j:plain

この録音の半年前にはマイルス・バンドから離れている。

(元)マイルスのバンドからはHerbie Hancock, Jack DeJohnette, Wayne Shorterが参加。

Miroslav Vitousもいて、Weather Reportへ。翌年早々には第1作を録音することに。

 

Somethin' ElseCannonball Adderleyの名義になっているけれども、みたいなものか、極端に言えば。

 

マイルス・バンドのライヴにはZawinulは不参加だったため、Post-1968 Milesにおけるスタジオとライヴのふたつの流れ、という興味深い展開になる。ライヴのマイルスの音、Chick CoreaKeith JarrettAt FillmoreLive Evil

 

Post-1968 MilesのChick Coreaの「終わり」

1971年と1972年のChick Coreaのきらめきには手がつけられない。

マイルスから離れて驚異と奇跡の2年間、その始まりがA. R. C.で、ど真ん中にReturn to Foreverならば、締めはこれ、Gary Burtonとのデュオ。

Crystal Silence

1972.11.06.

f:id:modernmovement1930:20170820141016j:plain

 

これ以降のChick Coreaを聴かないわけではないが、でもこの2年とは別。ここでPost-1968 Milesのチックは一区切り。

もう少し続いてくれていたら、あるいはもう一度戻ってくれていたら、と思わずにいられない。

1972年、Keith Jarrettの音

奇跡の1972年、Keith Jarrettの当時未発表ライヴ音源 。すごい、秩序と無秩序の混在。

アメリカン・カルテットとなるリズムセクションのトリオ、Charlie HadenPaul Motian

Hamburg '72

1972.06.14

f:id:modernmovement1930:20170820111729j:plain

 

どうしてこんなにも音が違うのだろうか。比較しているのはこれ、同じメンバーによるほぼ1年前のスタジオ録音。

The Mourning of a Star

1971.07&08.

f:id:modernmovement1930:20170820112446j:plain

Manfred Eicher/ECMの信奉者ではないが、エイヒャーがプロデュースしたHamburg '72にはあってGeorge Avakian/AtlanticがプロデュースしたThe Mourning of a Starにはない音の強度は、両プロデューサーの力量の違いに起因していると、さすがに思わざるをえない。Atlantic盤はどうにもとっ散らかっているというか、ECM盤のようになにかに収斂していく求心的な力感も、と同時に逆に弾け飛んでしまう遠心的なきらめきも、欠如している。

 

もちろん、Hamburg '72と録音時期が近いこれとか、

Expectations

1972.04.

f:id:modernmovement1930:20170820113450j:plain

 

翌年のライヴのこれとか、

Fort Yawuh

1973.02

f:id:modernmovement1930:20170820115618j:plain

もあるが、サックスだけでなくパーカッションにギターも含むこの2セットは、バンドの形態や音の肌理、ストラクチャーとテクスチャーからして、1974年からのキースの「つぎの展開=到達点」の「前夜」として聴くべきもののように思う。

 

つまり結局のところ、キースの「始まり」はECMの3枚、デュオのRuta and Daitya、トリオのHamburg '72、そしてソロのこれなのだろう。

Facing You

1971.11.

f:id:modernmovement1930:20170820114726j:plain

1971.05から1972.06までのほぼ1年間。

キースの「始まり」は、Post-1968 Milesのキースの「終わり」。

 

 ちなみに、Hamburg '72を鑑賞するためのもうひとつの文脈、発売年。

 2010年以降、ソロ(ピアノライヴと他楽器宅録)、デュオ、トリオ(スタンダーズとこれ)、カルテット(ヨーロピアン)を絶妙に振り分けながら。

発売年

2010:  Jasmine (2007.03): duo, Charlie Haden

2011:  Rio (2011.04.09): solo piano

2012:  Sleeper (1979.04.16): European Quartet

2013:  Somewhere (2009.07): trio, Gary Peacok, Jack DeJohnette

           No End (1986): solo, multi-recorded 

2014:  Hamburg '72 (1972.07): trio, Charlie Haden, Paul Motian

           Last Dance (2007.03): duo, Charlie Haden

2015:  Creation (2014.07): solo piano

2016:  A Multitude of Angels (1996.10): solo piano