1972年、Keith Jarrettの音

奇跡の1972年、Keith Jarrettの当時未発表ライヴ音源 。すごい、秩序と無秩序の混在。

アメリカン・カルテットとなるリズムセクションのトリオ、Charlie HadenPaul Motian

Hamburg '72

1972.06.14

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どうしてこんなにも音が違うのだろうか。比較しているのはこれ、同じメンバーによるほぼ1年前のスタジオ録音。

The Mourning of a Star

1971.07&08.

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Manfred Eicher/ECMの信奉者ではないが、エイヒャーがプロデュースしたHamburg '72にはあってGeorge Avakian/AtlanticがプロデュースしたThe Mourning of a Starにはない音の強度は、両プロデューサーの力量の違いに起因していると、さすがに思わざるをえない。Atlantic盤はどうにもとっ散らかっているというか、ECM盤のようになにかに収斂していく求心的な力感も、と同時に逆に弾け飛んでしまう遠心的なきらめきも、欠如している。

 

もちろん、Hamburg '72と録音時期が近いこれとか、

Expectations

1972.04.

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翌年のライヴのこれとか、

Fort Yawuh

1973.02

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もあるが、サックスだけでなくパーカッションにギターも含むこの2セットは、バンドの形態や音の肌理、ストラクチャーとテクスチャーからして、1974年からのキースの「つぎの展開=到達点」の「前夜」として聴くべきもののように思う。

 

つまり結局のところ、キースの「始まり」はECMの3枚、デュオのRuta and Daitya、トリオのHamburg '72、そしてソロのこれなのだろう。

Facing You

1971.11.

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1971.05から1972.06までのほぼ1年間。

キースの「始まり」は、Post-1968 Milesのキースの「終わり」。

 

 ちなみに、Hamburg '72を鑑賞するためのもうひとつの文脈、発売年。

 2010年以降、ソロ(ピアノライヴと他楽器宅録)、デュオ、トリオ(スタンダーズとこれ)、カルテット(ヨーロピアン)を絶妙に振り分けながら。

発売年

2010:  Jasmine (2007.03): duo, Charlie Haden

2011:  Rio (2011.04.09): solo piano

2012:  Sleeper (1979.04.16): European Quartet

2013:  Somewhere (2009.07): trio, Gary Peacok, Jack DeJohnette

           No End (1986): solo, multi-recorded 

2014:  Hamburg '72 (1972.07): trio, Charlie Haden, Paul Motian

           Last Dance (2007.03): duo, Charlie Haden

2015:  Creation (2014.07): solo piano

2016:  A Multitude of Angels (1996.10): solo piano